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2002/07/15(月)

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夏だ。

 夏。
 突き抜ける青い空。
 流れてゆく白い雲。
 かすかに耳に届く、さざ波の音。
 吹き抜ける風は、潮の香りをたずさえて。

「いくわよ、おいでっ! ウーピン!」

「アウッ! アウッ!」

ビキニに白いジャケットをひっかけ、いっさんに駆けてゆく少女と、犬。渚でたわむれる、無邪気なシルエット。誰もいない浜辺。二人だけの、夏。

「もうっ! だめだってば、こら!」

「アウゥゥン……」

波打ち際に横たわる少女の頬を、彼の舌が舐める。「ばかね……」波に洗われる体。抱き寄せられる、誠実な恋人。「でも……あなたになら、いいわ。誰も見ていないここで……おいで、ウーピン……」

そんな甘い生活など、どこにもないのが現実というものだ。やれやれ。

 夏。
 せま苦しいビルの空。
 のしかかる灰色の雲。
 轟々と耳をうつ、都会の喧噪。
 じわりと動きを止めた風は、どぶの腐臭をたずさえて。

「いくぞ、オラァ! 五筒!」げしっ!

「きゃいん!」

袖まくりしたワイシャツにどぶネズミ色のスーツをひっかけ、せかせかと足を運ぶ上司と、部下。不況にもがく、泪のシルエット。誰も助けてくれない都会。俺たちだけの、夏。

「へばってんじゃねぇぞ、あと4社はまわらねぇとなんねぇんだから、よ」

「ひえええぇ……」

「こんくらいでへばってたら、営業なんかやってらんねぇっての!」

俺は営業じゃねえよ! といいたい言葉を呑み込んで、黙って従う部下。へっ、どうせ俺は飼い犬ですよ。社畜ですよ。くそう。

「もう少し、頑張れ。会社に戻ったら、死んでいいからな。いや、すまん! 会社に戻って、報告書あげたら、死んでいい」

ええ!? 俺が報告書、書くの? 技術の説明員が必要だからって俺を引っ張ってきたのは、あんたでしょーが! おれはお手伝いで来てるだけなのに、なんで報告書まで……。っていうか、死んでいい、たぁなんて言いぐさだよ。とほほほほ……。

「ちっ、しょうがねぇな。ちょっと、休憩するか。おごってやるよ、ほら!」

放られた、というよりはショートからファーストへ矢のような送球! という勢いで投げつけられた缶を、ばしぃっ、と受け止め、痺れた左手を振る。いってぇ……加減てもんを知らんのか、あんたは。っていうか、これ炭酸じゃん! 投げるなよ! 泡になるだろ! ところで、いつも鞄に持ち歩いてるんですか、ドクター・ペッパー?

「ありがたいと思っとけよ。ったく、こっちは娘が旅行に行くとかで金せびりとられて、大変なんだから。そういや、おまえんとこの犬も一緒だったっけな」

「ええ、まあ……」

「まあったく、いいご身分だよなぁ。今ごろ、どっかの浜辺で『おいでー、むーみん!』とかって、遊んでんだろーな、あのバカ娘」

「いえ、『むーみん』じゃなくて『うーぴん』なんですけど……」

「どっちだっていいだろ、犬の名前なんか」


などというやくたいもない妄想を抱えて私は、昨日・今日と「マンガ喫茶」なるものに足を運んだのだった。ふう、夏の間には書いておこうと思ってたんだ、このネタ。

そういうところに行ったのは、実のところ、生まれて初めてである。マンガが読みたければ買ってきて自宅で読むし、ゲームがしたければ自宅で、インターネットに接続したければ自宅のマシンで、要するにマンガ喫茶で出来ることは、基本的には自宅でも出来ることしかない。なのに、なぜ急に、たてづづけにマンガ喫茶なぞに行ったのか。

それは、自宅のマシン以外の環境を使って、このサイトがどう見えるかを確認したかったからである。

昨日行ったところは、自宅から少し遠出したところの駅前商店街の中程にある店で。1時間400円というシステムであった。こちらはちょろっとサイトを見れればいいだけなので1時間もいらないのであるが、まあ、時間が余ったら、昔懐かしのマンガでも探して読もうかなー、などと。

とーんでもない。パソコンはかなり競争率が高くて、40分くらい待たされた。

その間、パソコン席を監視できる位置に陣取って、でも監視そっちのけでマンガ読んでたりする、間抜けな私。あっ、空いてる! と気がついて、あわててパソコンの前に移動。

やっと確保したパソコンは、なんだかやたら画面が狭い。むう? もしかして 800 x 640 か? ま、まあいい。本当なら解像度は 1024 x 768 は欲しいところなんだが。起動した Internet Explorer は、まずバージョンを確認する。ぇう!? 5.0 ですか? なぜに? 6.0 は嫌いですか? 5.5 になにか恨みでもありますか? 驚いたとき人はなぜ敬語になるのですか? ブロードバンドをうたってる店で、最新版のダウンロードが面倒くさいなんてことは……い、いや、追求すまい。きっとこの店のポリシーなんだ。管理しやすくするために、店のパソコンはすべて、環境やバージョンをこれに統一しているのだろう。そう思っておこう。

最初は、まあ、カモフラージュもかねて(って、誰に対して?)、ZDNet などの無難なサイトを2つ3つ閲覧する。さて、いよいよ本命、ZooM-Palace にアクセスである。

入り口(トップページ。警告!とか書いてあるところ)は、まあ、けっこうちゃんと表示されていた。

Entrance Hall。うぉ! 影がない……。しかもプレートとプレートがびったりくっついている。うむぅ。しかしボタンはちゃんと機能する。まあ、「可」としよう。

Story Room。おお、ちゃんと表示されて……あれ、シルバープレートが、ない。でも「Story Room」の文字は表示されてるなぁ。作品一覧もけっこうまとも。「楚清の秘密の日記」のタイトルが、2行表示になってる。これはちょっとみっともないか……。まあ、実害はないし、これも「可」だ。

うーん、Internet Explorer 5.0 では、まあ、こんなもんかなぁ。致命的な問題点は無いようだし、見れることは見れるから、特に対応せねばならぬということもあるまい。と言いつつ、「楚清」のタイトル2行表示が気になって、その夜、こっそりスタイルシートを変更。すこしは行にゆとりができたかな? 私には知るすべも無いことであるが。

日は明けて、今日。もう少しいろんな環境を知っておくべきだ、との天啓がひらめき、会社が終わった後、途中駅で下車。盛り場をちょっとはずれた辺りに見当をつけ、マンガ喫茶を探す。いや、別にマンガ喫茶でなくてもいいんだけどね。すでに絶滅しかかっている、インターネット・カフェでも。

それにしても、暑いなぁ。うえぇ。汗でワイシャツがへばりつく。たすけてぇぇ。くそう、暗色系のスーツに長袖のワイシャツなんて、やめておけばよかった。ネクタイが邪魔。うちの職場は服装自由なのに、なんでこんな格好を……もしかして、私の頭はいまだに春ですか? いーんだよ、周りじゅう私服でいるところにこっちも私服でいたって、つまんねーだろ。あえて、スーツなんだよ。だからって、長袖にする必要はないだろうに。などと妄想が頭をもたげ始める。一人で会話するのも、妄想に入るのなら、だが。

暑気あたりしそうな澱んだ空気の底をよろめくこと、数10分、やっとマンガ喫茶を見つけたときは、そこがオアシスに見えた。ちょっと小汚いビルの最上階にある、ちんけなオアシス。ああ、冷房がうれしい。

今日の店は、インターネットを使うかどうかを最初に訊かれた。もちろん、使う方を選択。指定されたパソコンの前に座り、まずは解像度チェック……あ、そうですね、もちろん、デスクトップのプロパティは触らせて頂けませんよね(汗)。しかたが無いので見た目で判断したのだが、うむ、1024 x 768 はあるな。よしよし。

次、使っているブラウザは……おおお、Internet Explorer 6.0 と Netscape 4.79 ではないの! ネスケの 4.79 なんて、初めて見たぞ。あ、メニューが英語だ。そうだ、日本語版はたしか 4.75 が最後だったんだよな。さーて、Netscape 4.7x で見る、私のサイトの見栄えは……駄目じゃん。

これはもう、致命的ですな。ボタン類がまったく機能しない。トップページの [ENTER] ボタンからして、クリックしても何も起こらない。脱力ぅ。しかたがないので、アドレスバーで直接ファイル名を打つ。「entrance.html」っと。あああ、ここも、駄目だぁ。ボタンは機能しないわ、表示はどーしよーもないわ。

これはもう、修正して直るようなレベルではないな。すまぬ。切り捨てます。m(_ _)m 軽さにこだわる方、どうせなら Opera 6.03 でもインストールしてやって下さい。こないだのネットランナーかなんか、そういう雑誌の付録CDに入ってました。探せば他にも、付録CDにいろいろブラウザを入れている雑誌があるかもしれません。もちろん、マシンスペックの制限もあるでしょうけれど。

なお、Internet Explorer 6.0 のほうでも一応、アクセスしてみたが、特に問題は無かった。自宅マシンの I.E 6.0 で見たときと、ほとんど一緒だった。当たり前だけど。

それから、上の妄想に出てくる上司と部下の話は、もちろんフィクションです。あんなことが現実にあったりしたら、たまったもんじゃありません。たまりませんとも。だから、私は営業じゃないので外回りに引っぱり出したりしないで下さいね、課長。

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