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Life as a Dog 3


Ver 1.00

作:クロマイト



「あっつー…」

そんな月並みなぼやきが出てしまう、うだる様な午後。あたしは甚五郎を連れてお出かけしていた。

出がけに替えたシャツはあっという間に汗で貼り付いて、重ったるく肌にまとわり付いてくる。折角シャワーを浴びてから出かけたのに、もう台無しだ。

そんなお天気もお構いなしに、甚五郎の奴は相変わらず元気だった。今も、まるで行き先が判ってるみたいにリードをぐいぐいと引っ張っている。

…実際には何にも判っていない証拠に、3回ほどカドを間違えて曲がろうとしたけど。

まったく、飼い主のあたしが言うのもなんだけど、テンションの低いこいつというのを一度見てみたい気がする。

あたしたちが向かってるのは、知り合いの鏑木沙織さんの家。

去年同じクラスだった人で、その頃は挨拶程度の会話しかした事がなかったんだけど。彼女の家も犬を飼っていて、この春頃から散歩の時に偶然顔を合わせる事が多くなって。

実は、あたし1人でなら二、三度お呼ばれした事がある。今回は甚五郎も是非に、っていう鏑木さんの有難いお言葉で初めてお邪魔する事になった訳だけど。

甚五郎の性格からして、今回のお呼ばれの表向きの目的の、「一緒にお勉強」なんて到底できそうにないと思うんだけど…。そんなあたしの気がかりも知らずに、当の甚五郎はどんどん歩いていく。



そうやってたどり着いた鏑木さんの家。相変わらずの大きさに圧倒される思いがする。

たしかお父さんが大きな会社の重役さんとかで、庶民のあたしとしてはお邪魔する度に格の違いを見せ付けられる感じだ。

玄関脇のインターフォンを押すと、すぐに鏑木さんが出てくれた。しばらく間を置いて、玄関のロックが外れる気配。

「あ…」

鏑木さんが、中からドアを開けてくれた。涼しそうなノースリーブのワンピース姿だ。

「いらっしゃい。待ってたのよ」

控え目に微笑んだ彼女は、凄く…何と言うか、色っぽかった。

そう。鏑木さんは最近、急に綺麗になった気がする。去年同じクラスだった時は…悪いけど『地味で目立たない人』くらいの印象しかなくて、クラスの男子の中にも「白ブタ」なんてひどいあだ名で呼ぶ奴もいた。

それが今では凄く大人びた雰囲気で、同性のあたしが見てもどきっとするくらい。うちのクラスの男子の中にも「隣のクラスの鏑木って、ちょっといいよな」なんて言う奴も居て、ホント男なんて勝手なものだ。

「…? どうしたの?じっと見て」

「え?あ、ごめんなさい。ぼーっとしちゃって」

「変なの」

くすくすと上品に笑う鏑木さん。あたしは赤面しながら、適当な話題を探す。

「あ…連れてきてくれたんだ。こんにちは」

そんなあたしの気持ちを知ってか知らずか、鏑木さんがかがみ込んだ。あたしの背後でうずうずしてた甚五郎が、すかさず足元をすり抜けた。

「こら甚五郎!ちゃんと良い子にしなさい!失礼でしょ」

慌ててリードを引っ張ったけど、もう手遅れ。かがみ込んだ彼女に、甚五郎が凄い勢いでじゃれついていた。

「ふふ。いいのよ。相変わらずすごく元気なのね」

鏑木さんはにこにこしながら、顔を舐める甚五郎の背中を優しく撫でる。

…あ。

その時、見えてしまった。彼女の、ワンピースの胸元。

ブラジャー、つけてない。

女の子同士だし、ここは彼女の家なんだから。気にする様な事じゃない、と思うんだけど。

何だか、変な気分になりそうだった。



鏑木さんの部屋は、適度にエアコンが効いて快適だった。

呆れるほど広くて明るい部屋。くるぶしまで埋まりそうな絨毯の上にローテーブルを出して、その上にノートや課題のプリントを広げて。あたしたちは時々お喋りをまじえながら、夏休みの課題をこなしていた。

こういう部屋に室外犬の甚五郎を上げるのは、正直気が引けたんだけど。鏑木さんがあんまり誘うもんだから、ついついお言葉に甘えて部屋に入れてもらった。奴は今のところ、隅の方で大人しくしている。そして…

もう一頭、あたしたちの傍らに寝そべってる子がいる。純白の毛並みも眩しい、血統書つきのグレートピレニーズ。鏑木さんの飼い犬のジェシーだ。

人間の大人にも負けないほどの体格に似合わず、ちょっと臆病な所が何とも可愛らしい。

ピレニーズはちょっと気難しいところがあるらしくて、家族以外の「お客」はなかなか認めようとしないって、前に本で読んだんだけど。あたしに関しては不思議とそういう事もなくて、時々クッションがわりにもたれかかったりしても、嫌そうな素振りは見せない。つい無意識に、純白の毛並みの手触りを楽しんでしまう。

そう言えば。

ピレニーズって、雪山での救助活動なんかでも使われてるって聞いた事がある。行方不明の遭難者を探したり、山小屋に荷物を運び上げたり。凍えそうな遭難者を、体温で温めてあげたりする事もあるとか。

プリントを睨んでそんな事を考えてたら、裸でジェシーの毛皮にくるまれてるところを想像してしまったりして。

ぞくり。 

腰の奥のほうから、むずむずする疼きが拡がっていく。

ダメだダメだ、こんな事を考えてちゃ。大体ここは他人のお宅なんだから…。

そう思いながら、甚五郎のほうをそっと盗み見た。あいつは退屈そうに、寝そべって目を閉じている。

実を言うと、あの出来事の後、甚五郎と何度か、してしまった。

人に言えない事だとは思うけど、正直それほどいけない事だとも感じていない。

してる時の甚五郎は可愛いし、あいつとのエッチは人間のオトコとでは得られない快感を与えてくれる。

だからと言って、人間の男性に興味がなくなるかと言うと、そうでもなくて。逆に、彼との仲は以前よりうまくいってたりする。何だか、彼のワガママにカリカリする事がなくなって、彼からも「最近性格が丸くなった」なんて言われたりしてるし。

要するに甚五郎との関係は、今の所あたしの生活に良い影響を与えている。

それに、甚五郎は人間じゃないんだから、エッチしても「浮気」じゃない訳だし。それに、変な独占意識や見栄を見せたりしない分、人間の男の子より付き合いやすいかも、なんて思ってみたり。

取り留めのない考えに浸って、手の方が止まっていた。鏑木さんが、怪訝そうにあたしを見ていた。

「あははは。国語、やっぱり苦手」

これは本当の話。暗記は得意な方だから、漢字の読み書きなんかは自信あるんだけど。『この時の筆者の気持ちを次の中から選べ』なんて言われると困ってしまう。

「ごめんなさい。私がうまく教えてあげられるといいんだけど…」

鏑木さんはこういうのが得意で、自然にすらすらと答えがでてくるみたい。逆に暗記とか計算とかが絡んでくるのが苦手みたいだ。お互いに得意分野を感覚でやってるから、相手にうまく教えることができない。頭の構造が正反対みたいだ。 

「ちょっと…」

俯いた鏑木さんが、少し言いよどんだ気がした。

「ちょっと、休憩にしましょうか。気分を変えたほうがいいかも」

「そうだねぇ。何だか煮詰まっちゃったし」

そう言ってシャーペンを放り出すと、あたしはばたりと仰向けになった。天井が、高い。

行儀が悪いのは判ってるけど、床に直に座ってたせいで背中が痛かった。絨毯の感触が気持ち良い。

「あのね、橘さん」

と、視界の外から鏑木さんが声を掛けてくる。

「え?」

「よかったら、お風呂入らない?」

「お風呂?」

何だか唐突だなあ、とは思ったけれど。

元々、彼女にはそういう、ペースが読めない所があったし。それに。

思い出した。ここへ来る途中、炎天下でかなり汗をかいてしまった。エアコンの冷気ですっかり汗は引いてしまったけど、年頃のムスメとしてはやっぱり気になる。着ている服だって、随分汗を吸っている筈だ。

「でも、いいの?あたし、着替え持ってないよ」

「着替えはうちのを貸すから。お洗濯もすぐ済むから、帰りまでには大丈夫だし」

何だかずうずうしい気もするけど、魅力的な提案だった。 

「じゃあ…お言葉に甘えちゃおうかな」

「うん」

鏑木さんの声が、なぜか弾んでいる様に聞こえたけれど。あたしは特に深くは考えなかった。



鏑木さんちのお風呂というのが、これがまた広くて。浴槽なんて大理石張りで、肩まで浸かって思い切り手足を伸ばしても、まだ全然余裕があるくらい。思わずバタ足したくなってしまう。

採光のいいお風呂に昼間っから浸かるって言うのも、何だか贅沢な気分。ぷかりと仰向けに浮かんで目を閉じると、お湯の溢れる音だけが聞こえてくる。同じくいつでも入れるとは言っても、うちの狭苦しいお風呂場とは大違いだ。

そう言えば…

あの時も、散々あちこちぶつけたんだっけ。

甚五郎と、初めてした時の事を思い出す。あんな状況じゃなければ、あいつと今の様な関係にはならなかっただろう。

…ぞくん。

イヤラシイ波が、あそこから全身に広がっていった。乳首が湯面に洗われる感触、あそこの毛がお湯にそよぐ感じ。そんなエッチな感覚を、急に意識する。

頭を浴槽の縁に載せて、両脚でバランスを取りながら。

乳房を両手で包み込んでみる。敏感になっていた乳首が、その刺激を受けてムクムクと勃ちあがっていく。

鏑木さんみたく大きくはない、まだ膨らみかけの乳房。けれど、掌の愛撫にぴりぴりと反応を返してくる。

胸をイタズラしながら、だけどあそこへは指を伸ばせない。

だって、ここは人の家のお風呂場で。他の人も当然入る筈のお湯の中で、そんな事ができる訳がない。

何故だろう。他人の家で、こんなイヤラシイ気分になるなんて。別に、変な雰囲気だったりとかじゃないのに。

立ち込める湯気の中、悶々とそんな事を考えていると

「橘さん」

「あ、はっ、はい!」

磨りガラスの向こうから、鏑木さんが声を掛けてきた。

「着替え、ここに置いておくから。よかったら使って。脱いだものは洗濯しておくから」

「う、うん…有難う」

驚いたせいで、馬鹿に大きな声で返事をしてしまった。変な奴だと思われただろうか。のぼせかけた頭でそんな事を考えながら、あたしはお湯から上がった。



あたしがお風呂を出たのは、それから暫く経ってからだった。

結局、あの後我慢できずに自分で慰めてしまった。もちろん浴槽から出て、だけど。

軽い自己嫌悪に浸りながら、脱衣場で体を拭く。さっき鏑木さんが持ってきてくれた着替えが畳んで置いてあった。白い、タオル地のバスローブだ。

「え?…これ」

広げてみて、ちょっと愕然とした。いくらなんでも丈が短すぎやしないだろうか。

試しに袖を通してみると、やっぱり。小柄なあたしでも、ちょっと屈んだだけでお尻が出てしまう。座ったりしたら、恥ずかしい部分が丸見えになってしまうだろう。

「………」

そうは言っても、他に着るものはない。あたしの服は、脱衣場の隅にある大きな洗濯機の中で回っている。最新型の、洗濯から乾燥まで一台でこなす優れものだけれど、さすがにそこまで素早くはできない。

仕方なく、脱水の途中でショーツだけ引っ張り出した。

生乾きどころか完全に「濡れてる」状態だけど、我慢するしかない。ひやりとした感触に耐えながら脚に通す。

それにしても、こんな格好で勉強に集中できるんだろうか。

そんな事を考えながら、鏑木さんの部屋に向かう。



「…?」

ドアの所まで来た時、ちょっと奇妙な気配に気付いた。

…声。

そう、押し殺したすすり泣きの様な声が聞こえた。

誰が泣くっていうんだろう。今この家には、あたしと鏑木さんと、あとは甚五郎とジェシーしかいない筈なのに。胸騒ぎにかられてドアを開く。

「…!」

そこには、とっさには信じられない光景。

四つん這いになった鏑木さん。ワンピースの裾は捲り上げられて、むき出しになった白いお尻の間に、ジェシーが鼻先をうずめて激しく舌を動かしている。胸元からはあたしよりずっと大きな乳房がこぼれて、ジェシーの舌の動きに合わせてたぷたぷと揺れていた。そして…。

彼女の口は、仰向けにした甚五郎の勃起したおちんちんをいっぱいに頬張っていた。

鼻にかかった悩ましい声をあげながら、情熱的に頭を波打たせる鏑木さん。そう、丁度以前あいつに見せられた、ビデオの外人の女優さんみたいに。

犬たちの荒い息遣い。鏑木さんのひくい喘ぎ。ジェシーが舌を遣う、くぱくぱというリズミカルな響き。

部屋中の空気が、蜂蜜みたいに粘りついてくる気がした。圧倒されて立ち尽くすあたしの前で、一人と二匹は無心に絡み合っている。その光景は、あたしの中のあの疼きを呼び起こす。

そう。手足の先がつめたく冷めていくと同時に、みぞおちの辺りに何かが凝固していく、欲望の疼き。お風呂で温められた躯が肌冷えていく。

「…かぶらぎ、さん」

びくり。鏑木さんがこっちを振り返る。まるで鞭打たれたみたいに。

「た、たちばなさん…ごめんなさい」

乱れた髪の間から、怯えたような目を向ける彼女。甚五郎のおちんちんを吐き出して、それでもしっかりと握った手を離そうとしない。

「ごめんなさい。私、我慢できなかった。どうしてもしたくって、我慢できなかったの」

「が、我慢って…」

「知ってるの。橘さんと甚五郎くんが、あたしとジェシーと同じだって。だから、ずっと…」

どきり。あたしは一瞬たじろいだ。さすがに甚五郎との関係は、他人に知られていいものじゃないから。

「か、鏑木さんとジェシーの関係って、一体何のこと!?あたしは、そんなんじゃ」

「嘘」

その時、いつのまにか鏑木さんのお尻から離れていたジェシーが、今度はあたしのあそこに鼻先を押し付けてきた。

「きゃ…!」

不意をつかれて倒れこんだところへ、ジェシーがのしかかってくる。四つん這いになって逃げようとするあたしに、鏑木さんの腕が絡みついてきた。

「ちょ、ちょっと。嫌っ!」

まだ濡れたままのショーツの股間に、ジェシーの舌の感触が走り抜ける。生乾きの布地に唾液のぬめりが加わって、すぐにぴったりと張り付いてしまう。

…いけない。さっきお風呂場で慰めたばかり。敏感になったそこは、すぐにでも濡れ始めてしまう。鏑木さんにしっかりと抱きしめられて、もう逃げられない。

「お願い、橘さん。ジェシーと、してあげて。かわりに私も、甚五郎くんにさせてあげるから」

「そ、そんな…い、犬となんて」

心にもない言葉。

そう、犬と。人間以外の、動物と。

甚五郎とする時に感じる、あのスリルにも似た感覚。受け入れられるのに、受け入れてはいけない動物のペニスと。ソレを意識してしまったら、もう後戻りはできない。

鏑木さんの掌が、するりと滑り降りて、あたしのショーツにかかる。抵抗する暇も無くむき出しにされた恥ずかしい部分に、エアコンの冷気が触れる。

「ひっ…!」

次の瞬間、ジェシーの舌が直接そこを弄り始めた。唾液でぬめった熱い舌が、クリトリスから陰唇、お尻の穴までを凄い勢いで嘗め回す。抑えきれない喘ぎ声が、口をついてあふれ出す。

「いつも、甚五郎くんにさせてるくせに」

鏑木さんの声。心なしか非難の響き。だって、こんな。

「いつもジェシーの事、物欲しそうな目で見てたくせに」

「そんな…」

そんな。気付かれてた。鏑木さんに。

そう。甚五郎とそういう関係になってから、あたしには困った癖ができていた。

散歩なんかで道で出会う犬たちが、気になって仕方ない。

人間と、犬と。普通にセックスできる事を、体で知ってしまったから。

街中で見かける犬達は、言ってみれば裸のオトコが町をぶらついてるのと同じこと。特に、ダルメシアンやドーベルマンみたいな短毛種で細身の犬は、普通にしていてもペニスが見えてしまっているから。

そして、ジェシーみたいな大型犬も。体格からペニスのサイズを想像してしまって、あたしは落ち着かない気分にさせられた。

「欲しいんでしょう?ジェシーのおちんちんが。ジェシーも、橘さんとしたがってるから」

鏑木さんの声が、頭の上から落ちてくる。あたしの体は鏑木さんの胸からずり落ちて、いつのまにか床の上に四つん這いになっていた。背中を反らして、あそこが後ろから良く見えるイヤラシイ姿勢。そんな姿勢で激しい舌の愛撫を受けながら、まだ知らないペニスが差し込まれる感触を予感して、あたしは慄えていた。

「言って、橘さん。ジェシーと、したいって。ジェシーのおちんちんが欲しいって」

「そ。そんな事…」

その時、あたしの背中に重いものがのしかかって来た。我慢しきれなくなったジェシーが、とうとうあたしにマウントしてきたんだ。あまりの重さに、あたしは絨毯の上に押しつぶされた。

凄い重量感。まるで熊か何かに襲われたみたい。あたしの背中に前足をのせて、激しく腰を突き上げるジェシー。それだけで、あたしの体はもみくちゃにされる。大きくなったおちんちんが、あそこを、太腿を、お尻の割れ目をなで上げる。

‐大きい…。

見えない位置にあるソレの存在感を、あたしはしっかりと感じ取っていた。膨らみきった甚五郎のモノよりも、更に大きい。

最近は少し慣れて来たとは言え、最後には意識が飛んでしまう位に感じてしまう甚五郎とのエッチ。それよりも更に大きいジェシーのモノを受け入れたら、一体どうなってしまうんだろう。期待感と恐怖感が交じり合った疼きが、あたしの全身を支配する。

「ほら。ジェシーももう我慢できないって。早く。はやく橘さんのアソコに、ジェシーのおちんちん挿れてあげて」

心なしか上ずっている鏑木さんの声。見上げると、四つん這いになった彼女のお尻には、甚五郎が前足をかけていた。後ろ足の間から勃起したペニスを突き出して、かくかくと腰をひくつかせている。

少し大柄な鏑木さんは、膝を大きく開いて腰の高さを合わせると、片手でペニスを誘導していく。それに合わせて甚五郎が、とっとっ、とたたらを踏んで腰を進めた。

「あ、あああぁ…」

彼女の唇から充実したため息が漏れる。まるで、甚五郎のおちんちんに押し出されたみたいに。その部分は、あたしからは見えないけれど。鏑木さんの表情を見れば、甚五郎のモノが奥まで挿入ったのはありありと想像できた。

「ああ。いい。いいよ甚五郎くん。硬くって、元気で、ああぁ!」

うわ言みたいな鏑木さんの言葉。ペニスとあそことの接点で起こる、ぴちゃくちゃという湿った音。犬と人間とが吐き出す荒い息遣い。色々な音が一つになって、あたしをたまらない気持ちにさせる。

あたしも、欲しい。あたしも、あんな風におちんちん挿れられて気持ちよくなりたい。犬の、ジェシーのおちんちんを。心の底から、そう思った。

あたしを押さえつけてる相棒は、さっきからくんくんと情けない鼻声を上げ続けている。

さっきは、あたしをレイプしようとしたくせに。今だって、あたしを力ずくで押さえ込んでるくせに。

後ろ手に前足に手をやると、あたしの気持ちがわかったんだろう、ジェシーは背中から足をどけてくれた。やっと自由になった体を起こすと、ジェシーの頭を抱き寄せる。彼は甘えた鼻声を上げながら、大きな舌であたしの顔をぺろぺろと舐めまわした。

あたしは舌を突き出して、ジェシーの舌に絡ませた。彼の舌を吸い込み、尖った犬歯にまで舌を絡ませる。

「ご主人様、始めちゃったねぇ。ねえジェシー」

ふかふかの毛皮を後ろ手に撫でながら、

「ジェシーもしたい?ご主人様とは違う女の子の中に、おちんちん挿れたい?」

いたずらっぽく、誘うみたいに。

「あたしのあそこに奥までおちんちん挿れて、あたしと一緒に気持ちよくなりたい?」

返事の代わりに、また顔を舐めるジェシー。

「ふふ。いいよ。ジェシーのおちんちん、中に挿れてあげる。あたしの中で、うんと気持ちよくしてあげるよ」

軽いキスで応えてあげてから、あたしは下半身の方へ手を伸ばした。自分の膝の間をくぐらせて、ジェシーの昂まりに指を這わせる。

‐大きい…。

さっき肌に触れてた時から大体の大きさは判ってたけど。実際に手で触れてみると、そのサイズが改めて実感できた。その上、根元がまだ膨らみきっていないという事は、まだ膨張する余地があるという事。

壊れてしまうかも知れない。

狂ってしまうかも知れない。

…でも。

欲しい。掌で脈打ってる熱い塊を、あたしの恥ずかしい部分で飲み込みたい。刺し貫かれて一つになりたい。熱く溢れる精液を、躯の奥で味わいたい…。

あたしは嫌らしくお尻を蠢かせながら、ジェシーの先端をあそこへ誘い込んだ。

ぴんと尖った先端が、期待で濡れた部分に触れる。ジェシーははっはっと荒い息を吐きながら、腰を振るのを我慢している様に見えた。そんなジェシーに愛おしさを感じながら、あたしの方からもお尻を差し上げて迎えにいく。

ずうぅっ…!

「あああぁぁぁ!」 

ペニスを迎え入れる時の、全身が毛羽立つ様なあの感覚。肉を割り開く感触がとんでもなく奥の方まで滑り込んできて、あたしは思わず嬌声を上げていた。

背筋がぴんと弓なりに強張る。あそこが勝手に収縮して、侵入してきたものをきゅっと締め付ける。恐ろしいほどの大きさの塊が、あたしの小さな膣を一杯に占領していた。

添えていた指で確かめると、まだ毛皮に包まれた根元までは収まっていない。当たり前だと思う反面、少し残念な気もする。ジェシーが、それで満足してくれるだろうか。

そう思った瞬間、ジェシーが激しく腰を振り始めた。散々じらされて、我慢できなくなったんだろう。だけど…

だけどそれは、あたしにとってはあまりにも激しすぎる動きだった。

四つん這いの体の上に、更に覆いかぶさった大きな体。体重なんて、多分あたしよりも重い筈。その重く激しい突き上げに、両膝が浮いてお尻が躍り上がる。

犯される…そんな言葉がふさわしい、全身をもみくちゃにされる動き。バスローブの前がはだけて、小さく尖った乳首が絨毯に擦り付けられる。

「うあっ、あっ、あう、ああ、ああ、あああ!」

甲高い雌の鳴き声が、あたしの咽喉から漏れる。よだれがだらしなく溢れるのを、止める事ができない。

それでもあたしはジェシーのペニスを受け入れ続ける。頭をまたいでいる彼の前足に両腕をしっかり絡めて、懸命にお尻を振りながら。ペニスの先端とあたしの膣奥と、たった一点で衝撃を受け止めながら。だって…

「すごい。凄い橘さん。ちっちゃな橘さんに、ジェシーのが全部…ねえ、気持ちいい?」

「うん、キモチイイ。ジェシーのオチンチン、凄く気持ちいいよ!」

そう、気持ちいい。粘液にぬめって滑らかにすべる大型犬のペニス。喜びに痙攣しながらそれを締め付けるあたしのヴァギナ。そのどちらもが、気が狂いそうに気持ちいい。

「凄い、凄いよジェシー。ああ、咽喉まで突き抜けそう!」

その時あたしは、まるでフェラチオするみたいに舌を蠢かせていた。本当に咽喉の奥からジェシーのペニスが突き出される様な、ありえない妄想に囚われて。

けれど。

そんな狂気じみた快感でさえ、まだ始まりでしかなかった。あたしの胎内に納まったジェシーの根元が、少しずつ膨らみ始めている。

あたしのそこは、いつの間にかジェシーのペニスを根元近くまで飲み込んでいた。その入口近くで、ジェシーの瘤が存在を主張し始めている。既に限界近くまでペニスを頬張っているあそこ。更に膨張した瘤まで収めたら、一体どうなってしまうんだろう。

怖いのと同時に、全てを受け入れたい欲望も感じる。

ジェシーの動作が変化してきた。激しい突き上げから腰全体を押し付ける動きへ。ジェシーも、受け入れて欲しがっている…。

それ以上に、あたし自身の雌の部分がそうしたがっていた。子供の腕ほどもあるペニスを全て胎内に収めて、彼の熱い精液を膣の奥で受け止めたかった。彼が吐き出す子種を、一匹残らず子宮で貪りたかった。

ジェシーの体の下で背筋を丸めて、あたしはペニスの根元をまさぐった。同時にお尻を突き出して、自分から奥へと銜え込む。あたしの思いを知ってか知らずか、ジェシーも腰を押し付けてきた。

「うあ。うあああっ!はああ」

あそこの入口が、切れそうに伸びきった。ぴりぴりと痛みが走る。

もう駄目。これ以上入らない。

あとちょっと、もう少しだけ。もう少しだけ入るから。

諦めきれずに、ずるずると続けているうちに。

多分、一番膨らんだ部分が通り抜けたんだろう。締め付ける入口に押し込まれる形で、ジェシーのペニスは瘤まであたしの膣内に収まってしまった。

「ああ、入った。ジェシーのおちんちん、あたしの中に全部入っちゃった」

凄い充実感。あたしの胎内に、大きくて熱いおちんちんの肉が、みっしりと詰まっている。

変な表現だけど、あたしの膣はコンドームみたいに、ジェシーのおちんちんに合わせて一杯に引き伸ばされているんだろう。じっとしているだけで、目の前が白く脱色されるほどの快感が襲ってくる。ほんの少し身じろぎするだけで、凄まじい刺激が全身を駆け巡る。

「ジェシー。ほら、ジェシーのちんぽ、あたしの中に全部入ったよ」

下から手を伸ばして、白い毛皮を愛撫する。彼がどんな顔をしているのか、ここからでは見ることができない。ただ、荒い息遣いが聞こえるだけだ。

「どう?これがあたしのおまんこの中だよ…あたしのおまんこ、気持ちいい?」

いたずらにお尻を振ってみる。途端に凄い快感が襲ってきて、あたしは思わず叫び声を上げる。

そうしているうちに、ジェシーがそわそわと動き始める。お尻を合わせるあの姿勢になろうとしてるんだろう。あたしはすがってたジェシーの前足を放して、またぎやすい様に体を低くする。

だけど…大丈夫なんだろうか。

あたしの中には、一分の隙間もないくらいに、びっちりとペニスが詰まっている。そんな状態でジェシーが体を入れ替えたら、一体どうなってしまうんだろう。

あそこが裂けてしまわないだろうか。子宮がもぎ取られてしまうんじゃないだろうか。

だけど…

今更、恐怖感は感じなかった。あたしの番いがそうしたいのなら、あたしは全然構わない。むしろ、ぜひそうしてほしい。

頭の上を前足が横切って、毛皮の暖かさで守られていた背中が空気に晒される。続いて後ろ足がお尻をまたぐ気配。

「ひぃっ…」

膣内でペニスが捩れる感触に、あたしは笛の様な鳴き声を上げた。横倒しになりそうなのを危うく堪えて、どうにか踏みとどまる。お尻だけを突き上げて、胸と顔を床にべったりと着けて、それはひどく無様な姿勢。

「ああ、あああ。あぁ」

あたしの方が、ジェシーより少し腰の位置が低いから。膣口が瘤に引っ張られて、凄い刺激が襲ってくる。だから、自分からお尻を寄せて、ペニスを胎内深くに銜え込む様にして。こうしていないと、瘤が敏感な入口を刺激して何も考えられなくなってしまう。

自由になった上半身をひねると、鏑木さんと甚五郎が同じ様な格好で交わっている。こっちは逆に鏑木さんのほうがお尻が高いから、彼女の方が膝を大きく開いて甚五郎に合わせていた。目を閉じて時々ぴくりと身を硬くするのは、甚五郎が彼女の中に射精してるからだろうか。あたしも…

欲しい。欲しいよ。あたしも、あなたの精子が欲しい。

ジェシーを振り返って、目でそう訴えながら。お尻に力を入れて、胎内に収まったものをきゅっと締め付けてみる。さあ、早く。早くちょうだい。早く、彼女みたいに気持ちよくして。

瞬間、熱くてさらさらした感触が膣内に吐き出された。

「ああっ!」

待ち焦がれたものに、あたしは喜びの声を上げた。ペニスを一杯に収めたあそこを更に押し広げる様に、大量の熱い液が、まるで蛇口をひねったみたいに流し込まれる。ペニスで満たされた膣に注がれた大量の液体は、そのままの勢いで子宮目掛けて殺到する。

狭い子宮と膣はすぐに液体に満たされて、行き場をなくした液があたしとジェシーのつなぎ目から絨毯の上に迸った。まるでお漏らししたみたいに。

ううん、本当に失禁してるのかもしれない。全身の穴という穴が弛緩して、中のものが全部流れ出しているような感覚。べったりと絨毯に崩れ落ちて、長い毛足に爪を立てて。

ふと見上げると、鏑木さんがこっちを見ていた。快感に目を細めて、白くて大きなおっぱいをぷるぷるさせながら。それでも、自分の行為を見せ付けるみたいに。

あたしも両腕を突っ張って、しっかりと顔を上げて見せた。そりゃあ、おっぱいは小さいけれど。ペニスを収めたお尻を大きく振りたてて、自分の相棒の、太くて硬いものをきつく締め上げて。

何かを叫んだかもしれない。彼女も何か言ったかもしれない。けれど。

聴覚が…ううん。脳そのものがショートして、何もわからない。聞こえない。

二匹の雌になったあたしたちは、お互いの胎内にそれぞれの番いがどれだけの快楽を注ぎ込んでいるのかを、誇らしく相手に見せつけていた。

凄く、凄く興奮する。鏑木さんが甚五郎としてるのを見ると。

同じ様に、あたしもまた、ジェシーとの行為を彼女に見せ付ける。もっと、もっと興奮してほしいから。

もっと興奮して、あたしをもっと感じさせてほしいから。

こういうの、やっぱりスワッピングって言うんだろうか。そんな取りとめのない事を考えながら。

何度目かの絶頂。目の前が真っ白になって、噴き出すみたいに涙が溢れてくる。

けれど、あたしたちの番いはまだ満足してくれない。まるで限りがないみたいに、熱い液体をポンプみたいに送りこんで来る。

もう駄目。もう許して。これ以上入らないよ。

もっと来て。もっと沢山注ぎ込んで。あなたの精子、あたしの子宮にもっと受精させて。

そんな正反対の気持ちに囚われながら。

あたしたちの饗宴は、犬たちがそれぞれの雌の子宮に、数億の報われない分身達を注ぎ込んで果てるまで、延々と続いた。



広いお風呂場には、西日が長く差し込んでいた。

激しい行為のあと、あたしたちはどちらからともなくお風呂へ向かっていた。甚五郎とジェシーも、浴槽の外でお供している。

無言。だけど、ひどく優しい、満たされた雰囲気。お湯の温かさが、くたくたに疲れた体に気持ちいい。

ふと気付いた。あたしと沙織さんのお腹のあたりの湯面に、小さなくらげの様なものがいくつも浮き上がって来ていた。あたしたちの子宮が飲みきれなかった、甚五郎とジェシーの精液。良く見ると、お互いの恥ずかしい部分から糸を引くように浮かんできている。

それを、それぞれが両手ですくって、浴槽の外へ落とし始めた。

そんなお互いの仕草がおかしくて、あたしと沙織さんはくすくすと笑いあった。

その時、甚五郎が浴槽の外からじゃれ付いてきた。

「こら甚五郎!ちゃんといい子にしてなさい!」

「いいのよ。一緒に入らせてあげましょう」

にこにこしながら沙織さんが言う。それが聞こえたのか聞こえていないのか、甚五郎が浴槽に飛び込んでくる。それに惹かれたのか、ジェシーまで浴槽に入りたそうにしている。

「もう。しょうがないんだから、お前は!」

「今度はご主人様としたいんじゃない?」

「そ、そんなぁ…もうくたくただよ」

「じゃあ、私がふたりのお相手をしましょうか?茜ちゃんは見てるだけ」 

そんな会話をしながら、あたしは、あそこがジェシーの精液以外のもので濡れ始めるのを感じていた。

夏の長い日はようやく翳り始めたけれど。

あたしたちの一日は、まだ終わりそうもなかった。



END


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